植物博士の文章錬成所

小説で植物の情報を伝えていく!(それ以外の記事が立つこともあります)

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

40.ブラジルナッツ

少女剣士は独り旅をしていた。星形のかわいい板に乗って空をサーフィンするので、徒歩よりは速くてもやはり時間はかかった。「ししょー…」 だが、沙漠以外の国中を放浪して分かった事は、友達という友達は自身も一時期世話になった街長に囚われ、探し人はこ…

39.スベリヒユ

「あー…まずい事になった…」 温室の中で、頭を抱えているオッサンが居た。手入れの痕跡が見当たらない髪を無造作にまとめ、薄汚い縁なし眼鏡と汚れた白衣を着ている。「草むしりに来たんだから別にいいだろ…」 アナスタシア区の植物博士、ガストンだ。腰のポ…

38.ホオズキ

王国の夕暮れは何処か曖昧だ。道すがら歩む人も、店頭から聞こえてくる客引きの声も。「もうし。」 国境を定める石灰峠/ダンベルロット山から首都――王宮ベルベットに向かう程、南に行けば行く程、彼の岸と此の岸の境目があやふやになっていく。「もうし、彼…

37.サクランボ

隣の国がピンク色のサクラに震え上がる頃、王国は花びらを散らした白いサクラの木の下に網が張られていた。目の細かいそれは合成繊維でできているかと思いきやとんでもない、シルクだ。「シルクって高級品じゃなかったっけ・・・」「此処からちょっと離れた…

36.ヤマノイモ

温室の中一面に咲く花畑と白衣の人を見て、急に昔を思い出した。「誰か居るのかね。」「…せん、せ、い?」 遠い昔、まだ7つだった私は研究助手の真似事を勝手にしていた。可愛がって下さった“せんせい”は根っからの研究者だった。昼も夜も研究対象の事を考…

35.アジサイ(赤)

「こんにちは。」 一般部としての任務を終えたアナスタシアのマナは、帝国唯一のリアル花屋“アーシング・ビューティー”へと足を運んだ。今日も友達が、売り子さんをしている事だろう。「あらいらっしゃい。」 だが出迎えてくれたのは友達の母親のエミナだっ…

34.イランイラン

!Alert! \(^▽^)⊿「あーまいこいのロマーンス!!」 朝目覚めたら、噎せ返る様な花の香りに包まれていた。例えるならマンゴーの様で、朝から頂くには少し重い。寝ぼけ眼で見てみれば、黄色い花が点々と続いている。見える範囲だけで十は超えるだろうか。「…

33.ラベンダー

かつてほぼツンドラの、苔しか生えない大地に温室を立てようとする帝国民が居た様に、砂漠に畑を作ろうとする王国民が居た。プレイグラ大沙漠と呼ばれる大きな大きな沙漠のど真ん中には、小さな町がある。それが“始まりの街ランズ”だ。 王国ロブリーズは魔法…