植物博士の文章錬成所

小説で植物の情報を伝えていく!(それ以外の記事が立つこともあります)

27.ネモフィラ

「知ってるかい。この砂塵の世が、花だらけだった日の事。」
昔、まだ●●●の居た世界が静かだった頃、世界は青い花で埋まっていた。
白の地色に空色を差して、細やかな葉の作りを隠すように咲き乱れる。
その花の名をさて何と言ったか。
「美しいだけで民の心を踊らせ、躯(うつわ)を眠らせる青い花。君達は戦ってこそ美しいのに。」
“小城”に君臨した“皇帝”はバルコニーにお出でになり、眼下一面に咲き誇る花々を見て実に地獄の住民らしい感想を遺された。
そして、ローブの下に青白い火の鳥を抱き、身の丈以上ある金色の杖を構えて曰く。
「どうせ生えるなら地を這い、肉を食らう薔薇が良(い)い。」
長々しい呪文と共に金色の杖が振り下ろされたその時、円やかな花畑は刺々しい赤色の蔓と、あの空色を写した剣弁薔薇(そうび)に支配された。
「これでも大魔法使いだったんだよ?でもちょっと極め過ぎたかな。
 聖職者とも天使とも悪魔とも契約したら、世界の方が壊れちゃった。
 僕にも信仰を説いて回った時もあったけど、たった1人の理なんかで壊れる世界で、
 一体何がしたかったんだろうね?」
そういう訳で“小城”の外は砂塵の世となり、
“小城”の周りは例の薔薇に囲まれた。今では花に惚れ込み、命を捧げる者達が絡まっているのだとか。
「ああ愉しいな!」
今宵も殺戮の世に、黒い太陽が昇る。
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今や食べられない植物と縁遠くなりましたが、ネモフィラ、どうやらトレンド入りするほど人氣の様です。あの一面に咲き乱れる写真を見たら「魂のルフラン」死者の世界を思い浮かべてしまったアカウントが此方になります。
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参考ホームページ
https://hitachikaihin.jp/hana/nemophila/
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CAST
・“箱庭の皇帝”ザルード
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