植物博士の文章錬成所

小説で植物の情報を伝えていく!(それ以外の記事が立つこともあります)

28.タンポポ(綿毛)

「たいさ!たいさ!」
子どもが歩いている。
てちとちてちと、元氣よく。
「あのね、ミサキね、おはなみつけたよ!」
「そうでありますか。」
それを見守る大人は飛行機帽に迷彩服。
一昔前の軍人姿はちょっと人目を引いてしまっているが、本人は全く気にしている場合ではないので、足首のサブブースターを吹かして低空飛行。
千歳緑のマントと練色のマフラーがふーっと靡く。
「どんな花でありますか?」
「えっとね、んーとね、きいろでふさふさ!」
「ほう。本官の推測では、ソレはタンポポでありますな。」
「たんぽぽー!」
一体いくつだろうか。3歳ぐらいの女の子と軍服姿の男性は、ただいま王国ロブリーズ・山岳都市スパイクを散歩中だ。
目的は、地面に丸く広がるギザギザの葉からにゅーっと伸びた黄色いお花。
なんでも、その花から綿坊主が出来て、吹いて遊べるらしい。
偶には珍しい玩具も必要だろうと、軍人は態々飛んできたのだ。
「おーい!!そこのお嬢ちゃんとコスプレ野郎、とまれ!!
 勝手に国境を越えるなし!!」
その時、王立大使館から羽の生えた馬に乗った銀色鎧団が現れた。
王国の秩序を守る副審(アービター)と、山岳都市スプロム王立大使館の皆様だ。
「あった!」
「…時間切れでありますな。」
お散歩は終了だ。
軍人は子どもを抱きかかえて一回転。そのまま小さな航空機へと変形した。
「うおわぁ!?」
「わーい!!」
そのブースター圧で、大人達が飛ばされる。
子どもは座席シートとシートベルトとパワーウィンドウでしっかり保護されて無事だ。綿坊主を持ったまま、付属のハンドルを回して遊んでいる。
「あーもう!!最近こういうの多すぎぃ!!」
お一人様用航空機は、そのまま帰路に就くのだろう。
後には人外魔境をどう裁いたものか、悩める大人達が残された。
-------
日本のタンポポは今や西洋種と混ざり、品種の同定は困難です。遺伝子多様性的には最高ですが、混沌からの純化は始まっただろうか?食用に用いる場合は種から育てるか、信頼出来るお店から苗を購入した方が良さそうです。
-------
CAST
・ミサキ
・TMF空軍大佐グランゼム
・副審マルセーユ=パースレイン
・山岳都市スプロム王立大使館の皆様