植物博士の文章錬成所

小説で植物の情報を伝えていく!(それ以外の記事が立つこともあります)

15.ウメ

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※完全版はこちら→短編集「錦上添花」其の一.
※写真お借りしました;https://www.photo-ac.com/profile/1079690


仕事部屋の隣にある食料部屋。
皆さん片付けが苦手なのか面倒なのか、しょっちゅう散らかって、何処に何が有るのやら。大変よく物が失踪しますので、少し整理していたのです。
「…まさかの干し忘れが出てきました…」
それで出てきたのがこの、壺。
梅干し…になる予定の梅です。
雨雪続きでころりと忘れていました。
「ユリ、手伝って頂けませんか」
「はーい!!」
あの方の娘は今日も元氣に返事をくれまして、重い壺を運んでくれました。
私ですか?物干し台が必要ですので、笊と一緒に持って行きましたよ。総合倉庫から南の庭まで。
…安定の脊椎ダメージ辛い…
「これでいい?」
「壺に赤い実が入っていますので、1つずつ丁寧に笊の上に置いていって下さい。お隣さん同士はくっつけない様に。」
「はーい!」
笊の上には赤く染まった実。
時には赤紫蘇の欠片を纏いながら、幼子の小さな手に拾われて行く。
「梅はそのままでは食べられないのに、どうして桃はそのまま食べられるのでしょうか…?」
「ふに?」
「同じ科なのに不思議ですね…ちょっと写真撮りましょう。お母様もお喜びになるでしょう。」
「しゃしんー!」
未来の梅干しに、未来の帝国をきっと握るだろう子ども。
あの方は喜ぶでしょうか。
赤梅酢で染まった手を綺麗にして、私は一眼レフを構えた。
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今回ネタにしたウメも入りますが、バラ科の果樹は自家不和合性…つまり、木が2本以上ないと実を付けません。自家栽培梅干しを作りたければ、梅の木をひとりぼっちにしないように!
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CAST
・スツェルニーのクライン
・ヴァルトリピカのユリ