植物博士の文章錬成所

小説で植物の情報を伝えていく!(それ以外の記事が立つこともあります)

13.トマト

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※完全版はこちら→短編集「錦上添花」其の一.
※写真お借りしました;https://www.photo-ac.com/profile/317036

トマトの名産地へ、見学に行った。
緑色の宇宙に、星の如き暖色が浮かび上がる。
実の大きさは掌大から爪程の大きさまで。形は見慣れた球や楕円形に、UFOの様な平べったいものまで。
千差万別、トマトの博覧会だ!
「その昔、トマトとは山に生えるもので、草勢も棘も強く、しかし実の大きさはマイクロサイズで、酸っぱくて食べられた物ではなかったそうです。」
少女が色彩豊かなトマト達を見ていると、遠くから声が聞こえてくる。
「それを人間が、色々なトマト達を交配させて、美味しく日持ちのするトマトを産み出したそうです。今では世界各国で見られるのではないでしょうか。」
「じゃあ、トマトは人と一緒にいっぱい旅して来たんだね!」
「そうですね。本当に様々な品種がありますから。」
今日もあの子は御飯を作る。
サラダの彩りにスムージーの中身、主菜の脇役にソースの素。
トマトは今や、人間の食生活に欠かせない存在(もの)となっていた。